ポッドキャスト 医療系英単語の発音

【第133回】シュワと「舌先を使わないダークL」は何が違うのか!

投稿日:2024年5月13日 更新日:

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/

(アイコンをクリックで登録画面へ移動します)

 

 

今回は、私たち日本人の苦手な「ダークL」、たとえば total の L のような、単語の最後に来るL の発音のコツについてお話をします。

total、oral、fatalなど、“-al” で終わる単語の発音 で最後の「L」が正しく発音出来ているか不安な皆さん、良ければ一緒に練習しましょう!

 

Dr.サトシ

ラジオは通常速度で10分28秒だ。
早く聞きたいあなたは倍速などでどうぞ!

 

 

「ダークL」の定義

エイミ

こんにちは!

医学英語発音コーチのエイミです。

 

Lの発音は、ライトL、明るいL と、ダークL、暗いL の二つに分けて解説されることが多いです。

その中でダークL とは、単語の最後の L、もしくは Lの後ろに子音が続く時のL のことを指します。

たとえば、 

● milk /mílk/ 牛乳

● silver /sílvər/ 銀 

● golf /ɡɑ(ː)lf/ ゴルフ

などのLが、「Lの後ろに子音が続く時のL」にあたります。lk、lv、lfと、Lの後ろに子音が続いていますね。

こういった L を、音の響きが暗いL、ダークLといい、舌先を上の前歯の後ろあたりにチョンと付け、そのまま喉で唸って「ウ」と、超低音で声を出します。

よくある間違いとしては、ミ「ル」クと、母音を付けて「ル(lu)」と言ってしまうこと、Lの後ろに本来入らない母音「ウ(u)」を入れてしまう方が多くおられます。

また、mi “r” k と、舌先が宙に浮いてしまい、R的な、巻き舌的な発音をされてしまう方も多くおられます。

ウを増やして「ル」にならないよう、舌先が宙に浮いてR的にならないよう、Lを発音する必要があります。

◆ ダークLの発音

 

舌先を使わないダークL

 

このダークL、「舌先は上あごに付けなくてもいい(付けても良いし、付けなくても良い)」と説明されることがあります。

舌先を付ける方が正確な発音ですが、付けなくてもL様の音が出せます。

この「舌先を上顎につけないダークL」の発音の方法について、先日、あるお医者様から突っ込んだご質問をいただきました。

residual” /rizɪ́dʒuəl/「残留の」、という、少し難しい単語の発音練習をご一緒に行っていた時のことでした。

「Lは舌先を上あごに付けても、付けなくても、どちらでもいいので、やりやすい方で発音してみてください」と私が先生にお伝えしたところ、

「L で舌先を付けなくても良いのなら、リズィジュア の「ア」と、次のLは、全く同じ口のかたちになるような気がします。どうやって違いを作ったら良いんでしょうか?」

というご質問をいただきました。

residual の  a は /ə/、シュワ、あいまい母音です。

シュワは、唇をあいまいに開き、低音でぼそっと発音する母音です。

◆ 曖昧母音 /ə/ shuwa の発音

 

確かに、Lで舌先を上あごに付けないのなら、「シュワと何が違うのか?」というのは、もっともなご質問です。

シュワとダークLは、口の形は同じでも、声を出す位置の深さ が違います。

シュワはLよりも口の前の方、舌の真ん中のあたりで声を出しますが、Lは喉の付け根のあたりまで発声位置を下げ、超低音で発音します。

また、声帯の使い方では、声帯をかなり絞り、ほぼ閉じるところまでもっていって声を出します。

そうするとL様の音が出ます。

発声位置を下げ、声帯を絞ると、舌先を上歯茎に付けなくても、ダークL的な音を出すことができます。

◆ 舌先を付けないダークLの発音

ただ、この「舌先を使わずにのどを絞って発音するダークL」がどうもよくわからない、と思われる方はたくさんおられます。

それが何か問題があるか?といえば、実はありません。

もともと L は舌先を使う子音ですから、使わないやり方は、より楽に発音するために動きをさぼっているだけです。

舌先を上の歯茎、前歯の裏あたりにチョンと付けて、低音で「ウ」とダークLを発音していただければ何も問題はないので、ぜひそちらで練習を続けてみてください。

それを続けていただく内に、ダークLの特徴である「音の流れを遮る感覚」、「そのとき非常に低音になる感覚」がだんだんと身体に馴染んできて、のどを絞るダークLも、ある日マスターされる可能性もあると思います。

 

Siri を使って発音チェックしてみましょう

ダークLの発音が出来ているかどうかは、Siri を使ってセルフチェックをすることが出来ます。

今回は「フローラとフローラル」「オーラとオーラル」の組み合わせでの発音チェックをお勧めします。

どちらの組み合わせも、最後にダークL が付くか付かないかの違いで、異なる単語になるものです。

二つの単語をスマートフォンに向かって話しかけ、Siri が聞き分けてくれるかどうか試してみるのは、とても良いセルフチェックの方法になると思います。

◆ ダークLの発音チェックにお勧めの単語

「腸内フローラ」(intestinal flora、gut flora)の

● flora /flɔ́ːrə/ 

と、形容詞「花の、花柄の」の

● floral /flɔ́ːr(ə)l/ 

「雰囲気、オーラがある」の

● aura /ɔ́ːrə/

と、形容詞「口述の」の

● oral /ɔ́ːr(ə)l/

こういった単語を使って、ダークLのセルフチェックをしてみてください。

ポッドキャストで私もこの2セットを発音していますので、よければご一緒に練習しましょう。

 

 

こんな単語も Siri に話しかけてみましょう

お医者様におすすめの、ダークLが練習出来る単語をもう少しご紹介します。

それくらい出来るよ…と思われるかもしれませんが、最初はぜひ、「ダークLが入る単語1単語だけ」で、Siri に話しかけてみてください。正しく表示されたら、次に複合語で練習していきます。

Siri は L がRっぽくなっていても予想で単語表示してくることが多く、完全な指導役ではありませんが、とりあえず無料で手早く使える手段としてお勧めします。

◆ ダークLの練習におすすめの医療系用語

 ● 腹部の abdominal /æbdɑ́mənəl/ 複合語例「腹部超音波検査」”an abdominal ultrasound”

 ● 完全な total /tóʊt(ə)l/  複合語例「胃全摘」”total gastrectomy”

 ● 身体の physical /fiɪ́zɪk(ə)l/  複合語例「リハビリ、理学療法」”physical therapy”

 ● 異常な abnormal  複合語例「異常な結節」”an abnormal nodule”

 ● 基礎、基底、根本の basal /béɪs(ə)l/  複合語例「基礎代謝」”basal metabolism”

 ● 側面 lateral /lǽt(ə)r(ə)l/  複合語例「側臥位」”lateral decubitus”

 

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/

(アイコンをクリックで登録画面へ移動します)

 

 

今回のまとめ

今回は「Lで舌先を上あごに付けなくて良いなら、シュワと何が違うんですか?」という生徒さんのご質問から、ダークLの発音方法についていつもより突っ込んで解説をしました。

● シュワとダークLは、口の形(唇と舌の使い方)は同じでも、声を出す位置の深さ が違います。

● 発声位置を下げ、声帯を絞ると、舌先を上歯茎に付けなくても、ダークL的な音を出すことができます。これがダークLが「舌先は上あごに付けなくてもいい(付けても良いし、付けなくても良い)」と説明される所以です。

● ただ、この「舌先を使わずにのどを絞って発音するダークL」がどうもよくわからない、と思われる方はたくさんおられます。それが何か問題があるか?といえば、実はありません。

● もともと L は舌先を使う子音ですから、使わないやり方は、より楽に発音するために動きをさぼっているだけです。舌先を上前歯の裏あたりにチョンと付けて、超低音で「ウ」とダークLを発音していただければ何も問題はないので、ぜひそちらで練習を続けてみてください。

● ダークLの特徴である「音の流れを遮る感覚」、「そのとき非常に低音になる感覚」を、大事にしていきましょう。

英語学習をする時、「表現」と「発音」はどちらも同じくらい大切です。

表現や英単語は知っているのに聞き取れない、言っても通じない、ということはとても良くあります。

そのようにならないよう、「音」も合わせて学習するように習慣付けていくことを私はお勧めしています。

メルマガでも「英語の “音” と医療英会話」の情報発信をしていますので、英語を話す・聞くことに興味のある先生は、良ければ無料メルマガにも登録なさってみてください。

それではまた一緒に英語学習しましょう!

 

-ポッドキャスト, 医療系英単語の発音

執筆者:

関連記事

【第99回】英検準1級のリスニング問題演習 1

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/ (アイコンをクリックで登録画面へ移動します)     今回は 英検準1級のリスニング問題で英語のリスニング対策をしつつ、同時に日常英会話の「 …

penis の発音はペニスではないという真面目な話

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/ (アイコンをクリックで登録画面へ移動します)     エイミ こんにちは! 医学英語発音コーチのエイミです。   今回は、泌尿器科 …

【第128回】英語「コッホの三角」「ファロー四徴症」「紹介状」の正しい発音

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/ (アイコンをクリックで登録画面へ移動します)     この間、ある生徒さんが、 「心臓に「コッホの三角」というのがあります」 と教えてくださ …

【第143回】「便秘」「お通じ」の英語表現! bowel「腸」はボーエルではありません

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/ (アイコンをクリックで登録画面へ移動します)     今回は、「便秘」「お通じ」「排便」の英語表現と発音 を皆さんとご一緒に学習してみたいと …

【第19回】医療英会話のアウトプット学習について考えてみよう

この記事が役に立ったら、フォローお願いします!/ (アイコンをクリックで登録画面へ移動します)     エイミ こんにちは! 医学英語発音コーチのエイミです。   英会話の学習ノウ …

最新記事

  1. 【第80回】ER で英語学習 術後の患者さんに関する医師とナースの会話
  2. zoom レッスンの始め方
  3. 【ERで学ぶ医療英会話】手の術前処置後の報告2【英語丸ごと解説】
  4. 【腹膜の英語】peritoneum、peritoneal の発音はこれで完璧だ
  5. 【第137回】「CT、X線に写らないことがある」英語でどういう?
  6. 【動画】「ログランク検定」の英語の発音をわかりやすく
  7. 【第24回】オーストラリア英語の聞き取り練習(TOEICとERで解説)
  8. 【腸音】ネイティブの『bowel』の発音を真似してみよう!
  9. 【学会レポ】Vol. 8「発音ミス続出の英単語 まとめ」
  10. 【第40回】世界的時短メソッド「ポモドーロ・テクニック」を試してみたら凄かった
  11. 【食道の英語】「エソファーガス」が通じないのはなぜ?
  12. 「集団免疫」英語でどう言う? 発音&聞き取りが難しめなので解説します
  13. 通じないカタカナ医学英語 まとめ【2】
  14. 英検1級受験記【6】The Early Solar System「初期の太陽系」
  15. 【第7回】”would” の使い方
  16. 【第16回】「滅菌」”sterile” の発音を本気でマスターしてみよう
  17. 【第47回】五十嵐カノア選手の五輪英語インタビューが勉強になり過ぎる 前編
  18. 【学会レポ】質疑応答編 英語の例文「最初の一言」
  19. 【第11回】医学のトップジャーナル「NEJM」で発音練習
  20. 【第126回】医療の英語表現「胆嚢」「カローの三角」をドラマで学習しよう!
  21. 【医療者の英語表現】「血がサラサラ」「ドロドロ」どう言えばいい?
  22. 『医療崩壊を防ぐ』『感染者を急増させない』英語でどう言う?
  23. コロナウイルス関連の論文が検索できる!『ludwig』を使いませんか
  24. mmHg の英語の読み方とネイティブの発音【ERで解説】
  25. 【第36回】「confidentiality」(守秘義務)のネイティブ発音と例文
  26. 【医療者の英会話】「上を向いてください」ネイティブはなんて言う?
  27. 【atypical】を アティピカル と読んでいる人、間違ってますよ!
  28. 【第84回】iPhoneの「Live Text」で大量の英語表現をメモアプリに保存する方法
  29. 【医療者の英語】血圧が「110の90」「低い、高い」「上がった、下がった」どう言う?
  30. 【ERで学ぶ医療英会話】開放骨折の緊急対応1【英語丸ごと解説】
エイミ
医療英会話の発音とリスニングの専門家。ER先生。舌トレ先生。英検先生。
20代後半から英会話習得をスタートし、最初は「センキュー」以外一言も話せない英語音痴だった。日本人にとっての理解しやすさを追求した解説と「トレーニングは楽しく!」が信条。ERが大好き。University of Baguio, Associate in Hotel and Restaurant Management卒。TOEIC 935点。

詳しいプロフィールはこちらからどうぞ。