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【第167回】医療の緊急度を表す英単語、正しく使い分けられますか?

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医療の「緊急度」を表す英単語、正しく使い分けられていますか?

今回の記事は、「『緊急手術』のつもりで “emergent operation” と言ったら、ネイティブに、それは “emergency operation” と言った方がいいよ、と訂正されました。なぜですか? “emergent operation” でも『緊急の手術』という意味だと思うのですが。」という、ある先生からいただいた質問から生まれました。

日本人にはどちらも「緊急手術」に見える「emergent operation」と「emergency operation」には、実ははっきりとした違いがあります。

また、緊急手術よりもさらに緊急度の高い「超緊急・即時手術」と、逆の方向の「待機的手術」の英語表現も、今回合わせてご紹介していけたらと思います。

 ERで正しい医療英語を学びましょう!

 

「緊急(24時間以内)」は “emergency”

エイミ

皆さんこんにちは!

ERオタク兼医学英語コーチのエイミです。

 

医療の「緊急度」を表す英語表現、まずは「emergency 〜」はどのくらい緊急なのか?から見ていきましょう。

最初に、医療ドラマERから、「emergency な虫垂切除術」という表現が出てくる会話をご紹介します。

会話の登場人物は、ヒックス先生という外科上級医の先生と、医学生のカーターです。

ヒックス先生がカーターに対して「emergency なオペをやる」という言い方をするのですが、果たして、どのくらいの緊急度の話をしているのでしょうか?

 

Dr. ヒックスカーター、何をしてたの? 3時間も探したわ。

Carter, I’ve been paging you for the last three hours.

医学生カーターすみません、ヒックス先生。

Sorry, Dr. Hicks.

Dr. ヒックス最初からついてるわね。緊急の虫垂切除をするから、ぜひ入ってちょうだい。

Well, you’re in luck. I have an emergency appendectomy in ten minutes. Kindly scrub in.

 

★「急性虫垂炎」メモ★

・軽症〜中等症: 緊急手術(24時間以内)が標準で、抗菌薬で炎症を抑え、1〜2週間後の待機的手術も選択肢に入る。←上記の会話の患者さんはおそらくこちら。

・重症(穿孔疑い): 即時(数時間以内)対応が必要。猶予は短縮される。

 

事故や急性疾患による大きな危機に対し、概ね24時間以内に行う手術は、英語で「Emergency operation」と表現します。

「Emergent operation」とは言いません。

「Emergency operation」は、日本語の「緊急手術」に最も合致することが多い表現です。

 

コラム:「手術」を意味する「surgery」と「operation」の違い

「手術」を意味する英単語として、「operation」と「surgery」があります。

この二つは、医療文脈ではどちらも「手術」であり、意味としての違いはほとんどありません

しかし重要な用法の違いとして、「加算名詞か不加算名詞かの差異には注意する必要があります。

「surgery」は不可算名詞です。

たとえば「手術を受ける」を「surgery」で表現すると、「have surgery」や「undergo surgery」などと言えます。

しかし「a surgery」とは言えないため、「surgery」で手術回数や件数を表現することは出来ません。

それに対し、「operation」は可算名詞です。

「手術を受ける」を「operation」で表現すると、「have an operation」や「undergo an operation」となります。

「operation」は、「手術回数・件数」を自然に表現することが出来ます。

例:「私は膝の手術を2回受けました。」”I had two operations on my knee.”

結論★

・医療文脈において「手術」を意味する「surgery」と「operation」に、意味の違いは基本的にありません。

・しかし「surgery」は不加算名詞、「operation」は加算名詞であることは、重要な違いです。

・オペの「回数」に言及する必要があるときには、加算名詞である「operation」を使います。

 

「準緊急・早期(2~3日以内)」は emergent

次に「emergent 〜」という表現に触れていきます。

「emergent operation」は、「emergency operation」に見た目は似ていますが、24時間以内よりも緊急度が低い場合、主に2、3日は猶予がある場合に使われ、この二つは同じ意味ではありません。

例1:

患者は胆嚢穿孔を防ぐため、急性胆嚢炎に対して早期手術を受けた。 

The patient underwent an emergent operation for acute cholecystitis to prevent perforation.  

例2:

虫垂炎の診断が確定次第、早期虫垂切除術が実施された。 

Emergent appendectomy was performed once the diagnosis of appendicitis was confirmed.  

例3:

SCUに入室した患者のうち6名が、術後合併症のため、早期手術を要した。 

Six patients required emergent operation due to postoperative complications in the SCU.  

 

このように、「emergent operation」は、「急を要するが、数日程度の猶予がある手術」を意味します。

「このオペはemergentだけど、emergencyではないね。」

という表現が、お医者様同士の会話ではあり得ます。

これは「『今すぐ手術台に載せないと命があるかわからない』というレベルではないけれど、明日明後日には対応しないといけないね。といったケースを指します。

会話例: 「準緊急のケースだから、48時間以内にオペをやろう。でも今夜しなくても大丈夫だ。」

“It’s emergent. We need to operate within 48 hours, but not an emergency tonight.”

 

コラム:英語では「名詞+名詞」と「形容詞+名詞」の組み合わせで、違う意味になります

「emergency operation」と「emergent operation」のように、英語では「名詞+名詞」と「形容詞+名詞」の組み合わせの2種類を使い分けるコミュニケーションが存在します。

これは、名詞形が「事象そのもの」を示すのに対し、形容詞形が「その性質を持つ状態、~的」と弱くなり、名詞のように「そのもの本体」ではないためです。

例えば「History book」は「歴史を扱った書籍(歴史の本)」ですが、「Historic book」は「歴史上の重要な書籍(「古事記」や「源氏物語」のような本)」で、全く意味が異なります。

そのため、私たちが表現したいことが「名詞+名詞」が良いのか、「形容詞+名詞」が良いのかは、英語を使う上では、なかなかに大切なポイントとなります。

 

「超緊急・即時手術(数時間以内)」はimmediate 

医療の「緊急」の表現に戻りましょう。

英語には、「emergent」よりも「emergency」よりも緊急度の高い場面で使われる表現があります。

「今すぐオペをしなければ命はない」

「一刻の猶予もない」

そのような時、ネイティブはどんな単語を使うのでしょうか?

こちらもERから、医師3年目のカーターと、カーターを指導する救急医のグリーン先生、そして患者さんの家族の、3人の会話で見てみましょう。

 

[突然昏睡状態になった後、一度目覚めた30代女性患者の頭部MRI撮影中、MRI室にて]

Dr. カーターグリーン先生、脳機能が低下してます!

Dr. Greene, she’s decerebrating!

看護師挿管の準備をします!

I’ll set up for intubation.

Dr. グリーンカーター、オペの同意書にご主人のサインをもらってくれ。僕はオペ室を確保する。

Carter, get her husband to sign a consent for immediate surgery. I’ll book an OR.

[カーター、CT室の外の廊下に急いで出て、家族に声を掛ける。]

患者の夫妻は大丈夫ですか?

Is she alright?

Dr. カーターいえ、すぐに手術が必要です。

No. She needs immediate surgery.

患者の夫手術?

Surgery?

Dr. カーターMRIで、小脳に出血があることがわかりました。すぐに手術をしなければいけません。この同意書にサインをお願いします。

The MRI just showed a leaking aneurysm in her cerebellum. It has to be operated on immediately. We’ll need you to sign this consent form.

 

このように、「emergency」よりも緊急度の高い場面で「一刻の猶予もない」時、ネイティブは immediate を用います。

immediate = super emergency(超緊急) です。

「今すぐ」と言いたい時、このように表現すると自然です。

 

「待機的手術(急がない手術)」はelective

最後に、ERにもよく出てくる医療の大切な形容詞、「elective」をご紹介します。

こちらも「緊急度」に言及される時に使われる単語なのですが、「この手術はelectiveである」とは、どういうニュアンスなのでしょうか?

なお、名詞「election」が「選挙、選ばれること」という意味だと思いつけば、意味が想像できるかもしれません。

ERから、外科レジデント3年目、日本の「専攻医」に相当する立場のベントン先生が、上級医へ手術の引き継ぎを行っている場面からどうぞ!

 

Dr. モーゲンスタンおはよう。手短に頼む。

Good morning, Peter. Give it to me quick.

Dr. ベントン57歳白人男性。健康でしたが、8週間前に当病院でX線写真を撮った時に、腹部に石灰化した大動脈瘤を発見。来月にオペの予定でしたが、夜になって腰の中央部が断続的に激痛に襲われ、当院に着いた時には腹部が膨張。腹膜刺激症状があり、ヘマトクリットの減少がみられました。

57‐year‐old white male in good health when previously seen at this hospital eight weeks ago where he was found to have a pulsatile abdominal mass with aortic calcification on X‐ray. Elective surgery was scheduled for next month. But this evening, he was complaining of severe intermittent pain in the mid back. By the time he got to the hospital he had a distended abdomen peritoneal irritation and a reduced hematocrit.

 

このように、「electiveなオペ」とは、「緊急度の低い手術・待機的手術・概ね数か月またはそれ以上の猶予がある手術」を指します。

ERでは医師同士の会話だけでなく、患者さんへの説明にも「electiveなので手術はすぐにやりません」のように話されている場面が見られます。

コラム:Elective は名詞として大学の「選択科目」の意味でも使われます

「緊急度の低い・待機的な」の意味を持つ形容詞の elective をご紹介しました。

この単語は名詞で使うこともあり、意味は「選択科目」です。

今回の学習の最後に、次のカーターの台詞で、そちらを確認してみましょう。

[医学部卒業間近のカーターが、「小児科の実習単位が足りていない」と告げられる場面です。]

Dr. ヒックス小児科の患者を必要数だけ診ないと、卒業できないわ。

You can’t graduate without seeing the required number of Pedes patients.

医学生カーター本当に!?

What!?

Dr. ヒックス幸い、ロス先生が、これから4週間、あなたを引き受けてくれるそうよ。

Luckily, Doug Ross is willing to take you on for the next four weeks. 

医学生カーター:選択で形成を取ろうと思ってたのに。

I was hoping for an elective in plastics.

Dr. ヒックス今日から始めたら、学期内に補習を全部終えて、他の学生と一緒に卒業出来るわ。ロスが待ってるわよ。

Good news is if you start this morning you have the time to complete this remedial work and graduate with the rest of your class. Dr. Ross is expecting you.

・remedial /rimı́ːdiəl/ 〔問題を〕解決するための。病気を治療するための。remedy(対策、治療)の形容詞です。

 

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今回のまとめ

今回は、医療の文脈で使われる「緊急」「準緊急」「即時」「待機的」といった、「緊急度」を表す英語表現をまとめました。

emergency:事故や急性疾患による生命の危機等で、「概ね24時間以内」に対応を必要とされる状況を指します。医療英語において頻回に用いられ、日本語の「緊急手術」に最も合致します。

・emergent:緊急度が emergency よりやや低い状況、「概ね2、3日以内」を表します。日本語では「準緊急手術」や「要早期手術」に相当し、72時間以内のスケジュール確保に該当するケースが多いです。

・immediate:emergencyよりさらに緊急度が高く、「概ね数時間以内」を表します。「超緊急」「間違いなく即刻対応が必要」「一刻の猶予もない」といった状況で使われます。

・elective:要対応ではあるが急ぐ必要はなく、「概ね1ヶ月以上」の猶予が見られるケースで用いられます。「手術は必要ですが、急がなくて構いません」とか、「手術は必要ですが、予約が詰まっているので、しばらく先になります」というような文脈などで見られます。

例:「手術は必要ですけれども、緊急で今すぐやらなければいけないという状態ではないですね。」

“Surgery is necessary, but it’s elective. You don’t need to have it immediately.”

私はお一人お一人が個別に必要とされている英語でレッスンを組み立て、「英語が話せる・聴ける」日本人英語学習者さんを増やすことをライフワークとしています。

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発音オタク、リスニングオタク、医療英語オタクである純日本人のエイミが、いろいろ発信しています。

それではまた一緒に英語学習しましょう!

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エイミ
医療英会話の発音とリスニングの専門家。学会発表、座長の英語、診療英会話、英検、OETなどのオンラインレッスンを提供中。20代後半から英会話習得をスタートし、最初は「センキュー」以外一言も話せない英語音痴でした。日本人にとっての理解しやすさを追求した解説と「トレーニングは楽しく!」が信条。ERオタク。University of Baguio, Associate in Hotel and Restaurant Management卒。TOEIC 935点。

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