医療系英単語の発音

【タバコ関連医療英語まとめ】「元喫煙者」「現喫煙者」「副流煙」どういう?

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今回は「医療における喫煙英語」がトピックです。

「現喫煙者」、「元喫煙者」、「副流煙」、「タバコを一度も吸わない人」、「時々吸う人」など、かなりたくさんの用語がありますが、どのように言えば良いのでしょうか?

ネイティブの使う生きた英語表現をご紹介します!

 

「元喫煙者」は “a past smoker”?

エイミ

こんにちは!

医学英語発音コーチのエイミです。

 

先日、ある先生から、このようなメッセージが私の元へ届きました。

 

エイミ先生、記事に取り上げていただきたい英語トピックがあります。

タバコを以前吸っていたが、やめた人のことを、日本人の医者はよく「past smoker」と言って、既往歴、あるいは趣向の欄に記入したり、プレゼンで使います。

英語の発表でも平気で使っています。

こちら正確には「ex-smoker」だと思いますが、どうなんでしょうか。

 

ということで、「元喫煙者」を past smoker という、日本人が良く使う表現は、もしかして間違っているのでは?という内容でした。

「確かに past smoker とは聞いたことがないし、あまり言いそうにもないけれどどうなんだろう」と私は思い、調べてみることにしました。

そこでまず、グーグルで “past smoker” と検索しました。

そうしたところ、1ページ目に表示されたのはほぼ全て、former smoker と ex-smoker でした。

 

 

このように、「元喫煙者」のもっとも一般的な英語表現は、

⚫︎ former smoker(フォーマル)

⚫︎ ex-smoker(ややカジュアル、砕けすぎというほどではない)

の二つです。

しかしそんな中、1ページ目に一つだけ、past smoker 見られました。

 

 

こちらのページを開いてみると、National Library of Medicine(NLM : 米国国立医学図書館)のもので、掲載されている論文は、どうやらフランス国籍の方々によるもののようでした。

ふーむ………。

この後、Youglish でも検索してみたところ、past smoker で一応、以下のように3件はヒットがありました。

 

 

ということで、「元喫煙者」を past smoker というのは完全に間違い、とまでは言えないのかもしれません。

ただやはり使用例が少ないですし、a former smoker や an ex-smoker の方が、間違いのないものであると思えます。

オバマ元大統領も、「自分は a former smoker であり、 an ex-smoker ですが…」と言っています。

 

◆オバマ元大統領、「自分は a former smoker です」「an ex-smoker として…」

オバマ元大統領:(記者からの質問に答えて)前にも言いましたが、元喫煙者の私は、常に喫煙欲と闘っています。つい手を出してしまったことがあるか?あります。

I’ve said before that, as a former smoker, I constantly struggle with it. Have I fallen off the wagon sometimes? Yes.

◆ fall off the wagon 「禁酒中の人がお酒に手を出してしまう」という意味の慣用句ですが、ここでは「禁煙中の人がたばこに手を出してしまう」という意味で使われています。

 

オバマ元大統領:タバコの消費量を減らすのと同じようにですね、元喫煙者として言いますが、…(会場から拍手)

-a recognition that, in the same way that we reduce tobacco consumption, and I say that as an ex-smoker, –

 

 

「現喫煙者」や「副流煙」はどういう?

 

「元喫煙者」の表現を英語であれこれと調べていたところ、CDC、Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病管理予防センターのサイトへ私はたどり着きました。

(CDCは、コロナ禍において世界の旗振り役を務めていたので、日本でもとても有名な機関になりました。)

「タバコに関する語彙集」のページでした。

こちらから、「現喫煙者」、「副流煙」、「一度もタバコを一度も吸ったことのない人」、「時々吸う人」などの医療的な表現を、確認しておきたいと思います。

 

参考:NHIS – Adult Tobacco Use – Glossary

 

⚫︎ 「現喫煙者」 Current smoker

Current smoker: An adult who has smoked 100 cigarettes in his or her lifetime and who currently smokes cigarettes. Beginning in 1991 this group was divided into “everyday” smokers or “somedays” smokers.

現喫煙者:生涯に100本のタバコを吸ったことがあり、現在タバコを吸っている成人。1991年以降、このグループは「日常的喫煙者」(everyday smokers)と「時々喫煙する人」(somedays smokers)に分けられている。

 

⚫︎ 「環境煙(副流煙)」 Environmental Tobacco Smoke

Environmental Tobacco Smoke (ETS): Also called second-hand smoke. Inhaling ETS is called passive smoking. Usually refers to cigarette smoke in the environment of a nonsmoker.

環境煙(ETS):「副流煙」(second-hand smoke)とも呼ばれる。ETSを吸い込むことを受動喫煙(passive smoking)という。通常、非喫煙者の周囲にあるタバコの煙を指す。

こちら、副流煙 環境煙 という言い方もあるんですね。

YouTube から、Environmental tobacco smoke、環境煙 の害について話されている台詞を一つ、ご紹介しておきます。

環境煙は、心臓病、血小板機能障害、動脈内膜の損傷、細胞による酸素供給と酸素使用への妨害など、他の身体への悪影響にも関与しています。

Environmental tobacco smoke is responsible for other kinds of effects that include heart disease, impairment of platelet function, damage to the inside lining of arteries, interference with oxygen delivery and use by cells.

 

⚫︎ 「毎日タバコを吸う人」 Every day smoker

Every day smoker: An adult who has smoked at least 100 cigarettes in his or her lifetime, and who now smokes every day. Previously called a “regular smoker”.

毎日喫煙する人:生涯に少なくとも100本の喫煙経験があり、現在毎日喫煙している成人。以前は「regular smoker(タバコ常用者)」と呼ばれていたもの。

 

⚫︎ 「元喫煙者」 Former smoker

Former smoker: An adult who has smoked at least 100 cigarettes in his or her lifetime but who had quit smoking at the time of interview.

喫煙者:生涯に100本以上の喫煙経験があるが、面談時には禁煙していた成人。

 

⚫︎ 「喫煙経験のない人、生涯非喫煙者(100本未満)」 Never smoker

Never smoker: An adult who has never smoked, or who has smoked less than 100 cigarettes in his or her lifetime.

生涯非喫煙者:喫煙経験のない成人、または生涯喫煙本数が100本未満の成人。

 

⚫︎ 「禁煙への(真剣な)試み」 Quit attempt

Quit attempt: Until 1990, the NHIS asked smokers about any “serious” attempts to quit smoking. From 1991 on, a quit attempt was more quantitatively defined as having stopped smoking for one day or longer with the intention of quitting.

禁煙の試み:1990年まで、NHISは喫煙者に「真剣な、本気の」禁煙の試みについて尋ねており、1991年以降、「禁煙の試み」は、「禁煙を意図して1日以上喫煙を止めたこと」としてより定量的に定義された。

 

⚫︎ 「時々喫煙する人」 Someday smoker

Someday smoker: An adult who has smoked at least 100 cigarettes in his or her lifetime, who smokes now, but does not smoke every day. Previously called an “occasional smoker”.

時々喫煙する人:生涯に少なくとも100本の喫煙経験があり、現在も喫煙しているが、毎日は喫煙していない成人。以前は「occasional smoker」と呼ばれていた。

 

エイミ

こちらの「毎日ではないが吸う人」は、

light smoker や social smoker という言葉も使われています。

social smoker は「その場に合わせて吸う人」、「吸う人がいたら吸う人」のことです。

「社交喫煙者」とは上手な言い方だなと思います。

 

ERの喫煙に関する問診シーン

最後に ER から、医師のスーザンが、肺がん疑いの患者さんへ喫煙歴を問診をしているシーンをご紹介します。

最初に音だけ聞いていただき、どのくらい聞き取れるか、チャレンジしてみてください。

その後、答え合わせをしましょう。

 

◆【リスニングチャレンジ】タバコに関する問診

 

 

 

 

◆【リスニングチャレンジ】タバコに関する問診 答え

Dr. ルイス:あとは写真を見てからですね。タバコはどのくらい吸いますか?

We’ll know more when we have the x-rays. How much do you smoke?

患者パーカーさん:1日に2箱。3箱の日もあります。

Two, three packs a day, sometimes.

Dr. ルイス:はい、吸い始めてどのくらい?

Mm-hmm. How long have you been doing this?

パーカーさん:じゅう…14歳ぐらいからかな。

S-Since I was about 14, I guess.

Dr. ルイス:もう(喫煙を)やめないと。

You really should stop that.

患者パーカーさん:そうですよね。

Yeah, I know.

 

今回のまとめ

今回は「past smoker」という表現は正しいのか?という生徒さんからのご質問から、タバコに関連する医療の英語表現についてまとめました。

調べてみるとかなりたくさんの用語があり、これまで積み上げられてきたタバコによる健康被害研究の奥深さを感じました。

● 元喫煙者 a former smoker, an ex-smoker(past smoker はあまり流通していません。)

オバマ元大統領:(記者からの質問に答えて)前にも言いましたが、元喫煙者の私は、常に喫煙欲と闘っています。つい手を出してしまったことがあるか?あります。

I’ve said before that, as a former smoker, I constantly struggle with it. Have I fallen off the wagon sometimes? Yes.

⚫︎ 「環境煙(副流煙)」 Environmental Tobacco Smoke

⚫︎ 「毎日タバコを吸う人」 Every day smoker

⚫︎ 「喫煙経験のない人、生涯非喫煙者(100本未満)」 Never smoker

また、英語学習をする時、「表現」と「発音」はどちらも同じくらい大切です。

表現や英単語は知っているのに聞き取れない、言っても通じない、ということはとても良くあります。

そのようにならないよう、「音」も合わせて学習するように習慣付けていきましょう。

それではまた一緒に英語学習しましょう!

 

-医療系英単語の発音

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エイミ
医療英会話の発音とリスニングの専門家。ER先生。舌トレ先生。英検先生。
20代後半から英会話習得をスタートし、最初は「センキュー」以外一言も話せない英語音痴だった。日本人にとっての理解しやすさを追求した解説と「トレーニングは楽しく!」が信条。ERが大好き。University of Baguio, Associate in Hotel and Restaurant Management卒。TOEIC 935点。

詳しいプロフィールはこちらからどうぞ。