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【第162回】「back」は「背中」じゃない!「hip」は「おしり」でも「股関節」でもない!

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Back と Hip は「背中」や「腰」と一対一になりません

エイミ

こんにちは!

医学英語発音コーチのエイミです。

英語では

「Backを捻って痛い」

「Hipを打って打撲傷」

というような言い方をすることがありますが、それぞれがどこを指すのか、わかるでしょうか?

私は毎日お医者様に医療英会話のレッスンをご提供していますが、その中で、お医者様であっても「Backがどこからどこまでなのか」「Hipがどこを指すのか」が、少しあいまいな先生が多くいらっしゃることに気が付きました。

それが今回このトピックを取り上げてみた理由です。

身体の位置を指す back とhip は、「背中」や「腰」のような日本語と一対一の関係になっておらず、日本人にとって、正しい位置がわかりにくいです。

日本人にとってややこしい “Back” と “Hip” の位置関係について、皆さんと一緒にまとめていきたいと思います。

 

英語の “Back” の位置とは? 1

 

ここで、英語の “back” の指す位置がわかる ER の場面を二つご紹介します。

一つ目は、救急医のグリーン先生と、患者のロレッタさんの会話です。

ある日、グリーン先生が勤務中に受付の近くを通ると、常連患者のロレッタさんがちょうど病院に入ってきました。

ロレッタさんはグリーン先生に声を掛け、

「先生、私、Back を~しちゃったの。」と訴えるのですが、どこを何してしまった、と言っているでしょうか?
 
次の音声を聞いて、一度考えてみてください!
 
 
 
 
以下が答えです!
 

ERリスニングチャレンジ1:この台詞の「Back」とは?

ロレッタ:グリーン先生。

Dr. Green.

Dr. グリーン:ロレッタ。調子どう?

Loretta. How have you been?

ロレッタ:参ったわ。腰捻っちゃった。

Lousy. (I) Threw my back out.

 

「Back」の一つ目の意味は「腰」!

グリーン先生とロレッタさんの会話から学習ポイントを2つまとめます。

・ “Lousy.” 「もう最悪。」「体調が最悪。」「つらいわ。」

「ラウズィー.」と発音します。I feel lousy. は、体調が悪いことを訴える時に使われる英語表現の一つです。

由来となっている単語は「シラミ」を意味する louse(ラウス)です。(シラミの複数形は lice(ライス)ですが、日本人が「ごはん」のつもりで rice と言うと lice に聞こえてしまうことがあります。)

もともと「lousy」は「シラミのわいた」という意味でしたが、そこから転じて「シラミがわいたように不快だ」「きつい」「つらい」といった意味でも使われるようになりました。

現代では「シラミ」を意識せず、単に「つらい」「体調が最悪」といった意味で使われることが多いです。 

・”I threw my back out.”「腰を痛めた(腰をひねって痛めた)。」「腰をやってしまった。」

“throw one’s back out” は、「腰を痛める」「ぎっくり腰になる」という意味の慣用表現です。

「throw」は「投げる」や「放り出す」といった意味ですが、「急に動かす・ひねる」「本来の場所から外してしまう」という感覚でも使います。「out」は「外に」「元の位置から外れて」というイメージです。

これらの意味を合わせて、Threw my back out. で「腰を痛めちゃった。」という意味となります。

ロレッタさんの言う “Back” の位置を確認しましょう。

Back の指す位置として、日本人がいうところの「腰」であることが多くあります。

英語の「Backを捻った」「Backが痛い」という表現は、腰を指している可能性が高いです。

 

英語の “Back” の位置とは? 2

ロレッタさんのいう「Back」は「腰」でしたが、英語のbackは、「腰」だけでなく、別の場所を指すこともあります。

2つ目のBack もERから学習してみましょう。

次の場面に登場する患者さんは、急性大動脈解離、acute aortic dissection で救急搬送されてきた高齢の女性患者さんです。

患者さんは、非常に苦しそうにされながら、

「〜(場所)が、〜〜〜のように痛い。」

と、外科医のベントン先生に訴えています。

少し聞き取りにくい箇所ですが、出来るだけ頑張ってお聞きになってみてください!

 

ERリスニングチャレンジ2:「Back」は「腰」だけではありません

看護師:高血圧です。今は220の140。

Hypertension. She’s 220 over 140 right now.

Dr. ベントン:グリーンに知らせろ。大至急カーターを呼べ。

Call Mark. Get Carter down here now.

事務員:了解。

Aye, sir.

患者さん:背中が、背中が千切れる!

My back. It’s ripping apart.

 

「Back」の二つ目の意味は「背中」!

急性大動脈解離の患者さんの訴えから学習ポイントをまとめます。

・ “My back. It’s ripping apart.” 「背中がちぎれるように痛い。」

 急性大動脈解離は、突然、胸や背中に「引き裂かれるような」痛みを感じる疾患であるといわれます。

「Back が引き裂かれるようだ」という表現の「Back」は、upper back「背中」を指している可能性が高いです。

 

★英語の「back」まとめ★

・Back = 首の下からおしりぎりぎりのところまで。

・日本語の「背中」+「腰」。

・「back が痛い」と言えば、「腰が痛い」または「背中が痛い」の両方の可能性があります。

・背中を upper back、腰を lower back ということもありますが、英語話者はどちらも単に「Back」と表現することが多いです。 

・腰なのか背中なのかは、「何々をしていて痛めた」「どんなふうに痛い」などの前後の文脈や、患者さんが腰と背中のどちら側に手を当てているか、などを見て判断します。

 
 
 

英語の Hip の位置とは?

 
 
ERから3つ目のクイズをお出しします。
 
Hip の位置を学習しましょう。
 
 
 
次の場面では、3人のお医者さんが、階段から転落して救急搬送されてきた男性患者さんの治療にあたっています。
 
救急隊から最初に情報を受け取った救急医のブレナー先生が、後からやってきた外科医のニーラ(Dr. ラスゴートラ)に状況説明をしています。
 
ブレナー先生は「患者は、ヘッド(頭部)、ヒップ、バックに打撲傷あり。」と伝えていますが、ヒップとはどこでしょうか?
 

ERリスニングチャレンジ3:「Hip」とは?

 
Dr. ラスゴートラ:患者は?
 
What’ve you got?
 
Dr. ブレナー:53歳男性、階段から転落。頭部、腰部、背部に多発打撲症。
 
53-year-old male, fell down a staircase. Multiple contusions to head, hip and back.
 
● contusion /kəntúːʒən/  打撲傷。
 
 

「Hip」は「腰に手をあてる」の「腰」部分!

ブレナー先生の “hip and back” は、ドラマでは「腰部、背部」と和訳されていましたが、もう少し詳しく説明します!

・ “hip” は左右に二つある

「腰に手をあてる」動作をするときに手をあてる、骨盤の盛り上がり部分、その場所が英語の Hip です。

日本語の「腰」の一部ですが、英語では Hip は Hip であり、一つの別個の部位として分類して考えます。

日本人「腰」

英語人「hips and back」

 
 
 

★英語の「Hip」まとめ★

・hips=体の側面。サイド部分。骨を中心とした部位。「右と左に1か所ずつある」と考えます。

・「腰に手を当てる」は、英語では “put your hands on your hips” と表現します。

・「骨+肉(筋肉・脂肪)」のでっぱり部分。

・お尻の少し上の、骨盤の張り出した部分。

・日本語の「腰」の一部です。

・Hip は「おしり」ではありません。おしりの上です。

 
 
 
 

Hip は「おしり」ではありません

 
英語の「hip」は「腰骨の出っ張り部分」を指し、「おしり」の上であり、「おしり」ではありません。
 
「おしり」は、英語で buttocks(バトックス)といいます。
 
(おしりは左右にふたつありますので、両方を指す時は “buttocks” となり、片方なら buttock となります。)
 
「ヒップアップ」は和製英語であり、おしりのトレーニングは英語では「butt workout」などとと言います。
 
丸くてきれいなお尻のことを bubble butt「バブルバット」と言い、日本語の「桃尻」に似たニュアンスです。 
 
“bubble butt” でグーグル検索するとこのように出てきます。
 
 
 
医療的な文脈で、坐骨神経痛などの症状の訴えとして「buttocks が痛い」という表現は十分にあり得ます。
 
 

★英語の「おしり」まとめ★

・buttock(s)=座るときに下になる肉厚の部分。日本語の「お尻」。二つあるので、通常、sを付けて複数形にします。

・hip の下側にあります。

・「ヒップアップ」は和製英語であり、おしりのトレーニングは英語では「butt workout」などとと言います。

・「筋肉+脂肪」中心の部位。 

・「おしり」を表すスラングで、butt(バット)や ass(アス)といった単語もあります。海外ドラマや映画によく出てきますので、知っておくと良いですが、使用は非推奨です。

 
 
 
最後にここまでの話+αを全部イラストにまとめたやつ置いておきます!↓
 
 
 
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今回のまとめ

この記事では、日本語の「背中」「腰」「おしり」と、英語の back、hip、buttocks の指す場所を整理しました。
 
・日本語の「腰」は、英語で言うと、「(lower) back」+「hips」の2つの部位が含まれると考えるのが妥当です。
 
・英語ネイティブは「背中」と「腰」を私たちのようにわけて考えず、「Backを捻った」「Backが痛い」という感覚で話すことが多いです。
 
・この情報だけでは背中なのか腰なのか正直わかりませんが、通常、「庭作業をしていてBackが痛くなった」のような情報や、「~のようにBackが痛い」といった痛みの種類を表す言葉などが追加され、手で位置を示されたりもしますので、診療において困ることは少ないかと考えられます。
 
・また、hip は逆に日本語の「腰」の一部であり、日本人の概念としては個別にわける意識を持たない部位です。
 
・「腰」の中の「腰に手をあてる」体側部は hips、「腰が痛い」という時の後ろ部分は backです。
 
・「hip を打った」というと、骨盤の出っ張った部分をどこかに打撲した、という意味です。
 
・「おしり」は buttocks という単語で表現します。臀部痛や臀部の腫瘍などの訴えとして、診療でも見聞きする可能性があります。
 

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それではまた一緒に英語学習しましょう!

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エイミ
医療英会話の発音とリスニングの専門家。学会発表、座長の英語、診療英会話、英検、OETなどのオンラインレッスンを提供中。20代後半から英会話習得をスタートし、最初は「センキュー」以外一言も話せない英語音痴でした。日本人にとっての理解しやすさを追求した解説と「トレーニングは楽しく!」が信条。ERオタク。University of Baguio, Associate in Hotel and Restaurant Management卒。TOEIC 935点。

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